日本・スイス国交樹立150周年記念
フェルディナント・ホドラー展
150th Anniversary of Diplomatic Relations between Japan and Switzerland
Ferdinand Hodler : Towards Rhythmic Images
【兵庫展】
2015年1月24日(土)~4月5日(日)/兵庫県立美術館
本展は日本・スイス国交樹立150周年事業の中核イベントです。
スイスの「国民画家」として絶大な人気を集めるホドラー。クレーやジャコメッティなど同時代のスイス人芸術家が、国外へ広く活躍の場を求めたのに対し、ホドラーは生涯をつうじて母国で暮らしました。その力強く壮大なヴィジョンは、19世紀末の象徴主義を語るうえで、重要な地位を占めています。
身近なスイス・アルプスの自然は、つねにホドラーの想像力を刺激する対象でした。「もっとも強い幻想は、無尽蔵の啓発の源泉たる自然によって養われる」とホドラーは語っています。この画家は、四季や天候に応じてさまざまな表情を見せるアルプスの自然に秩序やパターンを見いだし、それらを抽象化することで、現実の景色でありながらもファンタジックな、独自の風景画をつくり上げていきました。
ホドラーの作品を数多く収蔵するベルン美術館をはじめ、スイスの主要美術館と個人所蔵家より、油彩約60点、素描約40点を含む約100点が出品されます。オルセー美術館(パリ)、ブダペスト国立西洋美術館、ノイエ・ギャラリー(ニューヨーク)など国外でも相次いで個展が開催され、国際的な再評価の機運が高まっています。日本で40年ぶりに開催される本展は、《昼III》(1900/10年頃)など、日本初公開となる大作が出品される過去最大規模の回顧展となります。
ホドラーの芸術を「リズム」という視点から読み解きます。彼は若くして、両親や兄弟を失くしました。そのため、「死」や「憂鬱」といった世紀末芸術に特有の重々しい主題を扱ったホドラーの初期作品は、彼自身の生い立ちをも想起させます。しかし、20世紀への転換期をさかいに、ホドラーは「死」よりも「生」のイメージ、とくに人々の身体が織りなす「リズム」の表現に向かいます。日本初公開となる《昼III》は、人間の「覚醒」をテーマにした記念碑的な大作で、まさにホドラーの新たな「目覚め」を象徴するにふさわしい作品です。
19世紀末から20世紀初頭にかけてのスイスの象徴主義を代表する画家で、母国では今日でも「国民画家」として親しまれている。1853年にベルンの貧しい家庭に生まれ、実父の死後、幼い頃から継父のもとで絵画を学ぶが、本格的な画業は1871年にジュネーヴへ移り住んで以降にはじまった。当初はスイスの慣習的な風景表現やフランスの写実主義の影響下にいたが、1880年代からは象徴主義に傾倒し、人間の内面的な感情や心理を浮かび上がらせるモニュメンタルな人物表現によって、しだいに独自の境地を切り拓いた。アルブレヒト・デューラーやハンス・ホルバイン(子)らのルネサンス絵画から、ピエール・ピュヴィ・ド・シャヴァンヌによる近代の壁画までを学んだホドラーの力強い線描、大胆な賦彩、リズミックな構図は、大型の油彩画やフレスコ壁画など、とりわけ装飾的な大画面に効果を発揮している。一方、身近なアルプスの自然も、この画家の想像力の源泉でありつづけた。画業の後半期には、抽象化した形態と平滑な色彩表現によってアルプスの山々や湖をくりかえし描き、ほとんど装飾的ともいえる風景画を数多く残した。こうしたホドラーの人物画や風景画は、彼自身が提唱した「パラレリズム」(平行主義)という論理に基づき、類似する形態の反復や呼応関係によって組織されている点で注目される。晩年にいたっても大規模な壁画装飾を実現し、1918年に、長らく暮らしたジュネーヴにて65歳で没した。
1853年 |
3月14日、ベルンの貧しい家庭に6人兄弟の長男として誕生。 |
1860年 |
父が結核のため死去。 |
1868年 |
トゥーンにて風景画家フェルディナント・ゾンマーに弟子入り。 |
1872年 |
ジュネーヴの美術学校でバルテレミー・メンに弟子入り。 |
1885年 |
初の個展を開催。象徴派の詩人ルイ・デュショーザルと出会う。 |
1890年 |
最初の象徴主義的大作《夜》(ベルン美術館)を完成。 |
1900年 |
パリ万博に《夜》や《昼Ⅰ》(ともにベルン美術館)、《オイリュトミー》などを出品。金賞を獲得。 |
1904年 |
ウィーン分離派第19回展に31点を出品。グスタフ・クリムトらと会う。 |
1915年 |
20歳年下の恋人ヴァランティーヌ・ゴデ=ダレルが癌のため死去。 |
1918年 |
ジュネーヴの名誉市民となる。5月19日、同地にて65歳で病死。 |
タイトル:《ミューレンから見たユングフラウ山》 1911年/油彩・カンヴァス/ベルン美術館/Depositum der Gottfried Keller-Stiftung/Kunstmuseum Bern
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